コラム

エンディングノートを書いた人に聞いた、終活のとらえ方、そして終活による影響

2014年当時、終活についてはまだまだ研究が進んでいませんでした。
そこで、まず取り組んだのが、終活をしている方々の実態を知るということ。
先行研究では、終活に対してどのように考えているかといった「意識」についての研究はあったのですが、では実際にどんな終活をしているのか、なぜ終活に取り組んでいるのかといった「実態」については明らかとなっていませんでした。

終活についてどう考え取り組んでいるのか、そして終活に取り組むことでどのような影響があったのか。

終活の研究をすすめるにあたって、この2つを明らかにしたいと考えました。
ですが、前述のように、終活については未だ研究の蓄積がありませんでしたので、まずは終活を実際に行っている方々にお話をお伺いする必要がありました。

ということで、2014年、エンディングノートに取り組んでいる60代以上の方々8名に、終活についてのインタビュー調査を行いました。

なお、今回の研究では、比較的元気な、都市部在住の60歳以上の方々を対象としています。

細かい内容については、論文(ページ最後にリンクあり)をご参照いただければと思います。
ここでは、結果についてご紹介しますね。

終活とは?

他者に迷惑をかけないという思索の結果、自分のできることを選択し残す行為

家族、友人、ご近所さん、あるいは行政など、自分のことで自分以外の人を煩わせたくない、迷惑をかけない、という気持ちが強いことがわかりました。
これは、終活についてよく言われることですね。
ですが、同時に、自分のできることについて取り組み、選択をし、残しておく、という自分のことは自分でという意思もまた感じられていました。

終活による影響は?

終活に取り組むことで、どのような影響が見られたのかということについては、主に以下の3点について明らかとなりました。

  • 財産の整理、持ち物の整理などを始めとする事務的なことを中心として終活をすすめることで、現状整理が進んだ。
  • 現状整理が進むことで、自分の現在置かれている状態や、終活で何をしなくてはならないのか、何に取り組まなければならないのかと言った、自分の課題・問題把握が進んだ。
  • 他者に迷惑をかけるのでは、という不安から多少なりとも解放されるという心理的な効果があった。

終活の構造

今回のインタビュー調査で見えてきたものは、

終活について、他者と話すことが難しいからこその「終活」という構造

でした。

終活では、よく「家族と話しましょう」など言われることがあります。
ですが終活に取り組む人には、家族と疎遠であったり、家族と話せないけれどいざというときのためにエンディングノートを残しておきたい、生前は家族にはエンディングノートを見られたくない、などの声もありました。

日本において、自らの死に関わることを話すのは、ただでさえためらわれるものです。
あるいは、家族からそんな話は聞きたくないと言われてしまうことも。
核家族化が進み、たとえ親子でも別の世帯。
世代だけでなく、世帯も異なるとなれば、それぞれのライフスタイルも独自のものがあります。
親子であっても、親族であっても、考え方が違って当たり前とも言えます。
また、世帯が別々であるということは、話す時間もまた限られてくるところがあります。

そのようななかで、果たしてどこまで終活についてわかりあえる、話し合えるでしょうか。
お互いに話し合うことが大切なのは言うまでもありません。
ですが、話しづらい、話したくない、そんな気持ちは尊重できないものでしょうか。
そんな葛藤の一つの答えとして、終活というものが機能しているのではないか。
この研究では、そんなことが見えてきたように思います。

 

論文情報はこちら

 

博士論文にも同研究が載っています。博士論文要旨の方を、とりあえず。