コラム

マス・メディアにおける終活のとらえ方(1) ─ 2017年までの朝日新聞記事分析

「終活」という言葉は、どこから生まれたのか、ご存知でしょうか?
いわゆる就職活動のもじりである、終活。
2009年、『週刊朝日』の連載記事、「現代終活事情」が最初と言われています。
ここで主に扱われていたのは、葬儀やお墓のお話でした。
つまり、終活とは、当初は葬儀やお墓に備えることを中心としたもので、マス・メディアによって作り出された言葉、ということになります。

マス・メディアというものは、とかく大きな影響力を持っています。
彼らが終活をどのようにとらえ扱ってきたのかを知ることで、一般における終活のイメージを 伺い知る手がかりとなりうるでしょう。
特に、マス・メディアによって終活という言葉が作り出されたのならなおさらです。

そのために、この研究では、以下の3つの視点から、新聞記事のデータをもとに、マス・メディアにおける終活のと らえ方を考察しました。

  1. 新聞記事においてどのような終活の内容が実際に取り上 げられてきたのか
  2. それら終活の内容は読者にど のような印象を与える表現を用いているのか(ポジティブな表現なのか、あるいはネガティブな表現なのか)
  3. 新聞記事の扱う終活の内容は時間によってどのように変化してきたのか

分析対象は、『朝日新聞』の朝刊・夕刊において「終活」という言葉を含む記事(〜2017 年5月31日まで)。
新聞記事は、テキストマイニング(計量テキスト分析)による内容分析を行っています。

該当する記事は、462 件でした。

マス・メディアの伝える終活の内容

この分析により、終活という言葉はやはり葬儀や墓が中心となりつつ、相続、遺言、エンディングノー トと言った内容を主に扱っていることがわかりました。
同時にこれら終活の具体的な内容はポジティブな表現で語られることが多く、終活を様々に紹介する内容となっていました。
反面、終活の問題点を明らかにするような視点には欠けていて、終活が広がる段階、あるいは広げる段階といった風潮が強いことがうかがえました。

終活記事の頻出単語

 

終活記事に出てくる言葉のつながりを示すネットワーク図

 

一般記事、広告、読者投稿の違い

今回の新聞記事分析では、新聞記事を「一般記事」「広告」「読者投稿」の3つに分類して分析を行いました。
これらの記事ごとに特徴的に現れる語を分析した結果が下の図です。

結果、「葬儀」「墓」は一般記事に特徴的に現れることがわかりました。
広告においては、講座情報が主であり、その内容は「遺言」「相続」を中心となっていました。
読者投稿では、「夫」「主婦」などといった言葉から、主婦の視点や家族についての話題となること。また、終活は日記や本などの物品整理を主に語ることが多いことがわかりました。

終活記事の変化

終活の記事数は年々増加していました。
さらに終活記事は、徐々にポジティブな表現や日々の生活につながるような表現とともに語られるよう変化していることがわかりました。

終活記事数の推移

終活記事数の推移

終活記事の年ごとの頻出単語推移終活記事の年ごとの頻出単語推移

 

これらから、終活という言葉は今や定着していると言えること、死に備える終活といえどもその内容は、必ずしも死ぬということそのものに焦点が当てられてはいないことがうかがえました。

新聞記事においては、葬儀や墓についての内容を 依然としてその中心としつつ、明るい側面を強調する形で報道されてきたことから、終活に取り組むことを肯定する形でとらえていることがわかりました。

さらに近 年では徐々に生活者の視点を取り込みつつあり、その内容はまさに変化の時期にあることが示唆されています。

終活で語られる内容はまさに変化の中にあり、今後どのような話題となっていくのかによって、終活の方向性、その発展にも影響があると言えるかもしれません。

 

論文では、もう少しいろいろな分析を行っています。

 

博士論文にも同研究が載っています。博士論文要旨の方を、とりあえず。